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座談会
#01-合成皮革

-CROSS TALK #01
#01
トラブルを乗り越え、
合成皮革初の新たな質感&意匠性の獲得

自動車メーカーMAZDA様の新車開発において住江織物が手がけたのは、合成皮革を使った内装材。当社の合成皮革開発としては初となる表面プリントによって実現した、本革を使い込んだようなヴィンテージ感やオイルを馴染ませたようなしっとりとした質感の再現。
加えてVOC(揮発性有機化合物)の低減など、細部までこだわり抜いた内装材は高い評価を獲得しています。納期直前になって課題が発覚するトラブルを乗り越え、製品化を果たしたチームのうち、営業・開発を担当する2人にプロジェクトの様子を伺いました。

MEMBER

小玉知世Kodama Tomoyo

研究・開発
(自動車内装材事業)
2019年入社(中途)

大倉裕太Okura Yuta

営業
(自動車内装材事業)
2008年入社

今回開発した内装材において、こだわったポイントとは?


大倉

本案件は、MAZDA様の新型車「MAZDA MX-30」のシートに使われる合成皮革の開発でした。同社はデザインに対して特に強い思いを持っている企業で、今回は未来的イメージではなく、素材の良さやヴィンテージ感、環境への配慮を望まれました。オファーに対してハードルの高さを感じた反面、他社では扱わない素材やデザインに挑戦できるチャンスであると考えました。


小玉

耐久性と意匠性、さらに人と環境への配慮というコンセプトを実現するために、材料やプリントには特に工夫を凝らしています。従来の合成皮革で使用する有機溶剤を含む溶剤系ポリウレタンを使用せず、VOCの極めて少ない水系材料へと変更しました。ただし、開発段階ではまだ水系材料の知見が少なく、工場の実機テストではこれまで経験したことのない加工トラブルが発生するなど、開発に苦労しました。


大倉

小玉さんは、ヴィンテージ感の演出の面でも、雲柄のプリント加工やシリコーンコートを利用したなめらかな手触りなど、これまでの合成皮革では見られなかった意匠を実現してくれました。これはお客さまからもこれまでと違うテイストのデザインになったと好評を博しましたし、製品化後の市場評価でも良い反応を得ることができました。


小玉

本革を使い込んだ質感を表現するために、プリント柄や色の組み合わせ、触感の付与に挑戦しました。新規の耐摩耗材を選び、外観・触感・耐摩耗性のバランスの調整を何度も行ったのですが、その度に大倉さんにお客さまへの提案をお願いしました。そうして適切な評価をフィードバックしていただけたので、ご要望通りの質感・デザインに仕上がりました。

今回のプロジェクトでは納期ギリギリになって、問題が発覚したと伺っていますが、どのような問題が起き、またどのようにして解決したのでしょうか。


大倉

実は開発完了の2ヵ月前に行われた乗降耐久試験でシートの表面が剥がれるという結果が出ました。残された2ヵ月という期間では、製品の見直しやテストは1度行うのが限界です。私たちはまず、原因の究明とともに残された時間で何をすべきか、検討に検討を重ねました。


小玉

厳しい時間制限の中では、お客さまや工場とのコミュニケーションのズレが大きな影響を及ぼします。私の考えや対案を適切に理解して、先方に説明し、また先方の要望を噛み砕きわかりやすく開発に伝えてくれた大倉さんのおかげで、時間を浪費することなく問題の原因究明と対処、新たな試作に時間を割くことができました。


大倉

小玉さんは、対案を出す際にも複数案、懸念事項を合わせて提示してくれるので、クライアントへの説明もしやすく非常に助かりました。今回の原因は、表面側の問題ではなく、樹脂層と基布とを貼り合わせる接着層の密着不良が原因だったのですがそれがわかった後も非常にスムーズに対応していただきました。


小玉

当社で行った物性検査では問題は出なかったのですが、実際にシートの形にして乗り降りの試験をすると、基布から上の樹脂層部分が剥がれ、合成皮革表面が削れてしまったのです。無事に原因究明と対処に成功しましたが、今後の研究・開発において、こうした使用環境の違いを考慮していきたいと思っています。

開発完了直前のトラブルを解決し、無事「MAZDA MX-30」の内装材として採用された合成皮革。このチャレンジは、これからの電気自動車の車内空間のデザインニーズに応えるための試金石となることが予想されます。また世界的に合成皮革の環境保護への取り組みが進むなか、水系材料の使用は今後の製品展開を考えるうえで、ひとつの重要な知見となりました。今までにないニーズを実現させていくことで生まれる未来への可能性。その可能性を積み重ねながら、住江織物とそこで働く社員たちは成長を続けていきます。