社外取締役座談会

社外取締役座談会

ガバナンスの実効性を高め、企業価値のさらなる向上を実現

ガバナンス体制や運営に対する評価を聞かせてください。

澁谷
私はまだ1回しか参加していませんが、当社の取締役会はオープンな雰囲気で、自由闊達な議論を尊重する風潮があり、かなり活発な意見交換がなされていたという印象です。
種田
そうなんです。当社での社外役員歴が長い方が多いこともあり、企業理解に加えて各自の経験に基づく提言がなされています。議長である社長含め、社内役員のみなさんが毎回、社外取締役からの提言を真摯に受け止めてくださるので、忖度のない議論が行われています。
清水
我々からの質問に対しても毎回的確な回答が得られることから、取締役会に向けた綿密な準備が窺えます。
野村
事前の情報提供においても工夫がされており、「社外役員にきちんと理解してもらおう」、そして理解が進めば、より深い議論ができるはずだという認識があるのでしょうね。
種田
それと、社外取締役の多様性も確保できていると思います。年代・性別はもちろん、経営者・弁護士・会計士など様々なスキルを持った人が就任しています。
清水
私は自動車部品メーカーで海外事業に60年近く携わってきました。このバックグラウンドを活かして当社に対してできる提言は多く、しっかりと受け入れていただいています。
野村
取締役会の課題をあえて挙げるとすると、取締役会が「承認だけの場」にならないよう、「議論の場」としての機能をさらに強化する余地があるのではないでしょうか。たとえば中長期経営目標「SUMINOE GROUP WAY 2022~2024~2027」(以下SGW)策定では、我々がもう少し関与できたのではないかと悔やまれます。次回以降は策定の初動段階から関わりを深めていきたいと考えています。
種田
情報提供に関する要望としては、会議前の資料提供を今よりも早めてほしいということ。特に重要な話題の場合、オンライン会議などで事前説明を受ける機会もあるとよいと思います。現状は十分な審議時間を事前に確保できているとは言い難いですし、さらに内容理解を深めた上で議論に臨めるよう、改善を望みます。
野村
事業理解の観点からいうと、2023年5月期は再編後の奈良事業所見学が大いに役立ちました。製造業の現場では、安全操業を徹底した上で生産効率を高めることが大事です。当社グループの工場の安全に対する高い意識を確認することができました。今後も、生産現場を見る機会を設けてほしいと思います。
種田
グループを理解するための機会は定期的につくってくださっていて、実際にモノ・現場を見てイメージを掴むと、議論の解像度が上がりますね。加えて、他社では取締役会とは別に、社長と社外役員の意見交換会を実施することがあります。社長・社外役員それぞれのガバナンスへの理解度や、経営環境・中長期的戦略の認識など、社内役員が同席していると話しにくいことを含め、お互いに把握する目的で開催することが多いです。
澁谷
確かに取締役会は時間に制限があり、端的に意見を言い立てるにとどまってしまうことがありますが、取締役会以外のインフォーマルな議論の場だと、結論を出すことに縛られず、深掘りした意見交換ができますね。当社でも今後そういった機会を増やしてもらえるとよいのではないかと思います。

今後、どのような部分が当社の課題になるでしょうか。

清水
2023年5月期の実効性評価でも課題に挙がりましたが、サクセッションプランの策定・運用が道半ばだと思います。後継者に必要なスキルを定義し、それを兼ね備える人材を育成するための基盤づくりに、長期的に取り組まなければなりません。
種田
一つの事業部で経験を積ませ、その道のプロを育成するという考え方もありますが、私は40代くらいのタイミングで国内外のグループ会社などでの業務も経験させ、それまでの業務とは異なるスキルや知見を獲得し、視野を広げさせることが重要だと思います。
清水
当社はグローバルに工場を持ち、生産・販売をしているほか、海外への投資も盛んです。それらの戦略をトータルで長期的に管理していくためには、取締役会の高齢化も課題に見据えた上で、サクセッションプランを含めた人材戦略を策定しなければなりません。
澁谷
私は、可能な限り候補者をたくさん持っておくことが重要だと思います。求められる普遍的な資質・能力は最低限ありますが、企業の経営戦略は時代によって変わります。多くの候補者を持っておき、その時々に合わせて検討できる余地をつくっておくのがよいのではないでしょうか。また、多様な候補者を育てておけば、将来にわたって幅広い知識・能力を有した取締役会を構成できると思います。
野村
経験を積んでもらうという意味では、幹部社員の方々に取締役会で案件のプレゼンテーションをしてもらってもよいと思います。人数を絞る必要はありますが、将来、経営を担う候補者には、役員がどのような議論を交わしているかを見てもらえます。また候補者はテーマの説明をし、取締役とともに我々の質問に回答することを通じて、次の経営陣としての経験と心構えを養う機会になるのではないでしょうか。

当社に今後期待することを聞かせてください。

澁谷
インテリアや自動車内装など、事業が景気に左右される側面もありますが、比較的安定した事業を持っていて、事業基盤がしっかりした企業という印象です。一方で、日本国内でシェアを伸ばすには限界があると思います。すでに注力されている海外での事業のさらなる飛躍に期待をしています。加えて、海外というフィールドは、人材育成の面でも活かしてほしいと思っています。私が海外に出向していた際に実感したのは、自分一人で背負わないといけないことや責任が日本にいるときより大きくなるということです。海外経験は大きな成長機会だと思います。
野村
海外グループ会社での経験で力をつけた若手社員が日本に戻って活躍する、というストーリーもありますよね。
清水
はい。さらに、その逆も考えられます。海外グループ会社の社員に日本での経験を積んでもらうなかで、当社グループの精神(SPIRIT)を感じてもらい、自国に持ち帰ってもらう。2023年6月にはグループ理念やロゴを一新したこともあり、この機会に国内のみならず海外グループ会社への浸透を徹底するべきかと思います。
種田
たとえば人材不足による機会損失を防ぐための対策として、自社での人材育成はもちろんですが、M&Aという手段もありますよね。今後も事業に必要なM&Aは積極的に行っていただきたいと思います。
澁谷
優秀な人材を集めるためには、知名度も大切です。BtoC企業に比べ、当社のようなBtoB企業は知名度で劣る部分があります。そのため、グループ理念含め、様々な情報を社外に発信していくことも必要です。こうした取り組みも人材確保や会社の活性化に繋がるのではないかと思います。
清水
今の若い人にとっては自社が社会課題を解決し、世の中の役に立っているということは、働く意欲になりますからね。社会的な責任を全うしているということをどんどん強調していってほしいと思います。

さらなる企業価値向上に向けて、どのようなことに取り組みたいと考えていますか。

澁谷
当社グループはよい製品と人材を持ち、ベースがきちんとした会社だと思っていますが、今後も社会の役に立つ製品を生み出し続けるためには、人的資本、なかでも「多様性」が欠かせません。今後どんなところに成長機会があるかわかりませんので、そのために多様な人材を登用し、備えておくということは非常に大事だと思います。
種田
当社にとって今一番の課題はプライム市場での上場基準を充たすために「流通株式時価総額100億円以上」をクリアすることです。投資家の当社への期待値を高めていくためにも、会社の成長機会としてのM&Aにぜひ注力していってほしいと考えています。私は会計士として、財務的な提言ができると思っています。
清水
長年赤字だったアメリカの子会社、Suminoe Textile of America Corporationはようやく黒字化の目処が立ちました。これまでの赤字の原因は原価計算が甘かったことではないかというのが、現地を視察した私の考えです。収益が安定していれば、為替変動などの外部影響も、ある程度吸収できます。現在、原価管理は改善されていますが、再度同じ状況に陥らないよう注視していきたいと思います。
野村
単年度の収益はもちろん重要ですし、経営上黒字は続けてもらう必要があります。一方で長期的視点に立って、SGWの目標は当社グループの成長のためにあることを、経営陣と従業員全員が念頭に置いて、行動していくべきだと考えています。「今年度はSGWにおいてどのような位置づけの年か」ということを常に意識した上で、持続可能な成長に向けた経営判断ができるよう、一緒に尽力していきます。
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